北海道でシュタイナー思想を基に、教育・農業・生活を実践する場。

ミカエルカレッジ2013年度演劇講座【龍の退治?!現代に於けるダイモーンの解放

ミカエルカレッジ2013年度演劇講座【龍の退治?!現代に於けるダイモーンの解放】

大天使ミカエルが龍(サタンと呼ばれる年を経た蛇『ヨハネの黙示録』より)を退治する中世絵画や物語は、子どもたちを含めた現代の魂にとっては単純過ぎて、最早相応しくありません。生活の細部に到るまで神経を張り巡らせたような時代を生き抜くために、魂は粘り強くへこたれない生命力を必要としており、その生命力は深遠で精密な形象を求めています。

次にひとつの可能性を掲げてみましょう。

ギイェルモ 天使が罪を犯すなんて、そんなことがあるのですか?
天使 はい、私は「名のない天使」と云われているでしょう
ギイェルモ はい
天使 それから「鉄錆の天使」とも
ギイェルモ はい
天使 けれども本当は名まえがないわけではないのですよ
ギイェルモ エッ、では何故使わないのですか?
天使 かつてその名を使っていた頃、私はその名に驕り高ぶってしまったのです
ギイェルモ 驕り高ぶる、天使が?
天使 天使も完全ではありません。天使も常に修行と学習の日々なのですよ
ギイェルモ 何がそんなに自慢だったのですか
天使 私の名まえは、あなた方の理解できる言葉で云うなら「光の使い」という意味でした。そしてその名の通りまばゆく輝いていたのです
ギイェルモ 初めから鉄錆みたいじゃなかったんですね
天使 私は多くの人々に知恵と希望をもたらしていました。東西の優れた藝術家たちは、みな私の育てた「光の子どもたち」でした。けれどもいつしか、自分のしていることがほかのどの天使よりも勝っているように思え、あるとき天使の群勢に戦いを挑んだのです
ギイェルモ 天上の戦争ですか、大変なことですね
天使 天使の戦いというのはギイェルモくん、地上の戦争とは違います。甲冑を身につけることもないし、武器を使うわけでもありません。音もしないし、火花も散りません。
(舞台後方、薄い幕《膜、布》の向こうに天使の群勢と名のない天使が向き合って立っている、静かな、しかし、せめぎ合うような音楽がながれてくる。群勢の影が徐々に前ヘ進み、名のない天使の影は後退する)
ギイェルモ では何を争うのですか 
天使 争うというか、私は天使たちと向き合ったとき、彼らの愛と慈しみを感じました。そしてそれが私には、いつの間にか欠けてしまっていることを知ったのです。そこで私は自らの羽を折り、天の宝石で飾られた冠を脱ぎ捨てて、どうしようもない罪の意識と敗北感をかかえながら地上に降りてきたのです。今私は、失いかけた愛と慈しみの心をもう一度身につけるため、こうして学んでいるのです
 
戯曲『名のない天使』
第二幕第三場より
(二〇〇七年)

ここには、民族を越えた、しかし現代に生きる魂に相応しい「堕天使」の姿の描写が試みられています。

それでは「時代の天使」を今再び、伝承文化の世界観の中へ流し込んでみましょう。

するとそこには、伝統的な山野の風景に在りながら、時代を越えて生きようとする魂が登場します。それらの登場者、即ち近現代に相応しいエネルギーを得た伝承物語の主人公たちは、あるときは憐れに、あるときは幾分滑稽に描かれて、聴く者の内に不思議な哀しみ懐かしみを呼び起こします。物語は深遠かつユーモラスなものになるのです。

今一度、別の観点から見てみましょう。

かつて人間に智恵を授けたギリシアのダイモーンたちは、後の教義的・権威的な文明の中で、或いは悪霊として忌み嫌われ、或いはそもそも存在しないものと決めつけられ、近代建築の壁の中に埋ずまり、また物語の形象の中に身を潜めました。

歌や物語、そして演劇は、苦しみに喘ぎ、また解放を待ち望んでいる精霊たちの枷を外し、四大の世界へ還すことができます。神と人間との仲介者を「退治」するのではなく、本来の故郷、つまり物語の世界へ送り出してやることこそ、現代を生きる私たちの使命ではないでしょうか。

〈授業にあたって〉
本邦に伝わる昔話の形象を展開させて、戯曲の中に蘇生させます。その際、大天使ミカエルの先入観的な予備知識は、本来の姿を捉えるに大きな障壁となりかねませんので、ルドルフ・シュタイナーの思想や人智学を学んでいる方は特に注意してください。
五月の講座で共に戯曲を作成し、六月には立ち稽古、九月は最終的に音楽や照明なども含め全ての要素を整えて、ミカエル祭での上演を目指します。
なお、戯曲と授業の方向性について話し合う準備会を5月4日に予定していますので、可能な方は参加してください。(川手鷹彦氏記)

【日時】
準備会 5/4(土)午後3時~4時
第一週 5/27(月)~31日(金)9時~11時45分
第二週 6/24(月)~28日(金)9時~11時45分
第三週 9/24(火)~27日(金)9時~11時45分
9/29(日)
通し稽古9時~10時半 
ゲネプロ11時〜12時(小さなお子様のいらっしゃる方はこちらをご鑑賞下さい)
上演15時~16時(予定)(小学4年生以上のお子様からご鑑賞いただけます)
*受講なさる方は準備会から上演まで連続してご参加下さい。

【場所】ひびきの村オイリュトミーホール

【講師】川手鷹彦さん
[略歴]
ランダ舞手として、2000~2007年までバリ島の小村・寒村を巡り、ヒンドゥ儀礼の最奥を担う。1980~90年代には欧州で、ゲーテアヌムを中心に、演出家・役者・言語教師として、ドイツ語の言語精神に学んだ力を、「心の保護を求める子どもたち」のため、新時代の舞台芸術のために注ぐ。本邦では法務省や東京大学等の依頼により、演劇・言語・治療教育の諸分野で次世代を陶冶。
[著書/翻訳書]
『 隠された子どもの叡知』『心の傷を担う子どもたち(哲学者中村雄二郎との共著)』以上誠信書房、『とらおおかみ、子どもらの心が生んだ物語』地涌社『自閉症という体験』ドナ・ウィリアムズ著、誠信書房 他

【受講料】一般の方 1コマ3,000円 通し(44コマ)126,000円(税別)
     北海道シュタイナーコミュニティの方 1コマ2,000円 通し(44コマ)84,000円(税別)

【お申し込み/お問い合わせ】NPO法人人智学共同体ひびきの村事務局
〒052-0001 北海道伊達市志門気町6-13
HP  http://www.hibikinomura.org/
Email info@hibikinomura.org
Tel0142256735 Fax0142256715

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